腐女子って難儀


もう結構昔の話になるんだけど、とあるジャンルにハマった。

とにかくハマった。腐り散らかした。移動時間は携帯サイトを巡回しまくったし、帰ればすぐにPCを立ち上げサーチエンジンを駆使した。

少しでも多くこのジャンルの匂いのするところに行きたかった。もっとこのキャラのいろんな面を見てみたい!もっとすけべなA(キャラ)が見たい!もっとすけべなAが見たい!!(特大フォント)


が、いかんせんマイナージャンルであったため、すぐに検索し尽くした。

マイナージャンル、と言うのか、このジャンルはすでに結構な巻数が出ており、わたしがハマった頃には一世を風靡し終えた、いわゆる「オワコンジャンル」だった。

だからpixivなどの検索には二、三件ばかりしか引っ掛からなかったし、それでサイトの検索に走ったわけだけど、それも既に閉鎖していたり、最終更新日が二年前だなんてサイトの方が多かった。閉鎖しても作品を残してくれるサイトさん、ありがたいよね。


当時、割と時間があったのもあり、飢えに飢えていたわたしはふと自分もサイトをやってみようかな、と思い立った。

エムペ、ナノ、フォレスト、リゼ。最初はエムペでサイトを作った。わたしみたいにタグの知識が一ミリもなくても作れそうな作成サイトなのが魅力的だった。

pixivに作品を投稿しようだなんて頭は最初から無かった。だって当時、そのジャンルで活動されている方は殆どが携帯小説サイトだったのだ。


文章を書くことが元々好きだった、というわけではない。絵は無理でも小説なら書けるかなー、なんてナメくさった気持ちも大なり小なりあったと思う。だけど、やり始めてみると、小説とも言えないような拙い文章を書いて、サイトに載せると言う行為に、わたしは驚くほどに没頭した。毎日のように更新した。なんならリアルな友人関係や恋人関係もちょっと疎かにした節がある。ごめんなさい。それぐらいには夢中になった。サイトも毎日ちょっとずつ機能を付け足した。アクセスカウンター。日記。拍手。尊敬するサイトさま!のページ。うっ懐かし過ぎて頭が…!


毎日書くことばかり考えた。楽しい!楽しい!次はどんな話を書こう!妄想するのも楽しかったし、たまに拍手やコメントいただけるとめちゃくちゃ浮かれた。

好きです、なんて短い文章を何回も何回も読み直しては一人でにやけていた。字面にすると改めてキモいな。

そんな感じで毎日毎日浮かれポンチに更新していたら、少しずつ他のサイト主さんと交流を持つようになった。それである日、そのサイト主さんの一人からツイッターに誘われた。

誘われるがまま始めたツイッターは、正直めちゃくちゃ楽しかった。マイナージャンルだったが故にわたしみたいに飢えた野獣がたくさんいた。

そもそも腐友どころかオタ友すらいなかったわたしには、臆面もなく漫画の話を出来る場所って言うのが新鮮過ぎて、暇さえあれば呟いた。呟いたら反応がある!ひえー幸せ!サイトを更新したらツイッターで感想を言ってもらえることもあった。ありがてえ〜。


そんな平和なある日、事件が起きた。

そのジャンルがアニメ化したのだ。いやもうこれ言うとジャンル特定余裕って感じするけど。

オワコンジャンルと思っていたジャンルに突然人が溢れかえった。サイトのカウンターが見たこともない速度でぐるぐる回ってる。拍手数が伸びまくってる。えっこわい。突然黒船が来た江戸時代の人間の気持ちになりながら成り行きをただポカンと見ていた。コラボグッズ発売!コラボイベント決定!オンリー開催!大手サークル様参入!ポカンとしながらもグッズは買ったしイベントも行ったし薄い本も大量に手に入れた。

もともとジャンルにいた人達には、アニメ化に対して結構ネガティブな意見も、あったかのように思う。マナーがどうの。公式の腐媚びがうんぬん。CP論争のあれやこれや。

わたしは割と目先のことしか見えない短絡的に性質なので、アニメ化は単純に嬉しかった。動いて喋るキャラ達が観れる!もっとすけべなBA(CP名)が読める!もっとすけべなBAが読める!!(特大フォント)

脳内お花畑で浮かれていたら、ある日突然飛び火した。サイトがある掲示板に晒されたのだ。正直、これに関してはわたしが悪いんだけど。

R18作品を、タイトルページにR18と明記してあるだけで、明確なワンクッションを入れていなかった。閲覧注意してあるからいいやろ!って軽い気持ちだった。それを指摘されたのだ。そしてその掲示板のリンクを、ご丁寧に拍手に貼っていただいた。今思えば、これ掲示板に書き込んだ人と貼り付けた人って同じ人だったのかな? その時は親切な人が教えてくださった!ぐらいに思ってた。まぁそれはともかく。

そんな経緯もあって、サイトを閉鎖したわたしは活動の場をpixivに変えた。

pixivに作品を上げたら、驚くほど評価された。と言ってもあくまで評価(当社比)だけど。これは単純に時期の問題で、わたしの書いた話が取り立てていい、というわけではない。そりゃさ、評価されれば飛び上がるほど嬉しいけども。だけど、身の丈に合わない評価は、わたしの自意識を過剰なものにしてしまったみたいで。

周りの目が気になるようになってしまったのだ。

「2000文字程度の話を連投しないでほしい」

「会話文だけの小説は読みたくない」

「言葉の誤用萎える」

これらは別にわたしに向けて言われたわけではない。ふと感じたことをそのまま言っただけの呟き。ツイッターってそういうもんだし。ある程度共感できる部分もあるしね。会話文だけの小説は普通に結構好きだけど、2000文字のシリーズが30分ごとに投稿されてたらいやまとめろよ、って思ってしまうし、言葉の誤用は萎えるってほどではないけど一瞬首を傾げてしまうから、小説の世界から現実に引き戻される。うーん、まぁねえ。そうだよねえ。そういう意見もあるよねえ。わかるよ。


だけど、なんか、疲れたなって思う。


一応いつも一万文字程度の話をpixivにあげるようにしてるし、会話文があんまり続くようなら地の文を挟むようにしてる。言葉の誤用は、まぁ、完全に思い込んでたらしてると思うけど、疑問に思ったときは辞書を引くようにはしてる。

でもさぁ、サイトで小学生の作文みたいなのを、難しいことなーんにも考えずに書きたいように書いてる時、楽しかったよ。1000ブクマなんて絶対つかなかったけど、ちょっと反応もらえただけでバカみたいにうれしくなっちゃったりしてさぁ。

今はもう、なんか無気力っぽくなっちゃってる。一つのジャンルである程度書き続けて、ようやく満足感を得たからかもしれないけど。まだ書きたいなぁって思うのと、疲れたなぁって思うのか天秤の上でゆらゆら揺れてる。

またああいう気持ちになりたいなぁー。評価なんて気にせず一心不乱に書きたいように書くの。

そんで「出、出〜〜www短文投稿奴〜〜www」って、草生やされながらごくたまーに良かったよって肩叩かれたら最高だよね。

ちょっと小汚い居酒屋の焼き鳥が死ぬほど美味かった時ぐらい最高。あー腹減った。